2017年12月24日日曜日

12/23 第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 vs ヴィッセル神戸 @ ヤンマースタジアム長居

天皇杯 準決勝
2017年12月23日(土)13:04KO ヤンマー

スタジアムヤンマースタジアム長居主審山本 雄大
入場者数24,833人副審八木 あかね、越智 新次
天候 / 気温 / 湿度晴れ / 12.7℃ / 47%第4の審判員岡野 宇広
追加副審福島 孝一郎、池内 明彦
スターティングメンバー
ヴィッセル神戸ヴィッセル神戸
 
セレッソ大阪セレッソ大阪
 
  • 監督
  • 吉田 孝行
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
ヴィッセル神戸ヴィッセル神戸
セレッソ大阪セレッソ大阪
今回対戦今季平均
データ項目ヴィッセル神戸セレッソ大阪ヴィッセル神戸セレッソ大阪
FK21211617
CK4654
PK0100
シュート6151110
警告/退場1/04/01/02/0

<監督・選手コメント>

ヴィッセル神戸 吉田孝行監督
セレッソ大阪 尹晶煥監督

ヴィッセル神戸 渡部博文選手、高橋峻希選手
セレッソ大阪 水沼選手、柿谷選手、ソウザ選手、マテイ・ヨニッチ選手、山村選手

ヴィッセル神戸 渡邉千真選手(ヴィッセル神戸公式)
セレッソ大阪 木本選手、福満選手、丸橋選手、キム・ジンヒョン選手(セレッソ大阪公式)

第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会準決勝。ヤンマースタジアム長居でのセレッソ大阪対ヴィッセル神戸の一戦は1-1で延長戦に突入するも、その延長で2点を奪ったセレッソ大阪が1-3で勝利。今シーズン2つめのタイトルをかけ14年ぶりの天皇杯決勝進出が決まった。

■メンバー

12月2日のリーグ戦最終節から3週間ぶりの公式戦となる天皇杯準決勝。ヴィッセル神戸はそのリーグ戦最終節で負傷し、治療のために帰国しているポドルスキが不在となるが、それを想定した上で1ヶ月前の前回対戦時に完敗を喫しているセレッソ対策を準備した布陣を採用してきた。
フォーメーションは前回対戦時の4-4-2から中盤に松下、高橋秀人、藤田のボランチ3人を起用する4-3-3に変更。前線には渡邉千真が1トップに入り右には小川、左に小林。最終ラインには右から高橋峻希、岩波、渡部博文、伊野波と並ぶ。GKにキム・スンギュが復帰した以外は12月16日に行われたステップアップリーグの先発メンバーがそのまま並んだ。

セレッソのメンバーは、リカルド・サントスと酒本が出場停止となる中で、関口に加え杉本と山口も負傷離脱。さらに柿谷も全体練習に復帰したのは今週に入ってからということでベンチスタートとなり、前線には山村と福満が並び、ボランチには秋山。フォーメーションはいつもの4-4-2のままだが少しメンバーが入れ替わった中での一戦となった。

■ハイプレスを止めたヴィッセル神戸

前回対戦時もそうだったが、吉田監督就任以降の神戸は以前からのクラブカラーでもあるハイプレスを行うチームになっていっていた。リーグ戦で川崎フロンターレと0-0で引き分けた試合でも、天皇杯準々決勝で鹿島アントラーズに対してPK戦の末に勝利した試合でもハイプレスで試合の主導権を握ろうとしていた。
しかしプレビューで詳しく書いたように、低い最終ラインとハイプレスというアンバランスな組合せによって出てくる歪をセレッソが使ったことで前回対戦時はセレッソが快勝。
これを受けて神戸の吉田監督や選手から「リーグ戦終了後の3週間でこの試合に向けてセレッソ対策として新たな戦術に取り組んだ」との発言があったように、この試合での神戸は前回対戦時と異なる戦い方で挑んできた。
神戸の守備の形
わかりやすく変わっているのは4-4-2から4-3-3になったフォーメーション。これによってセレッソのCB2人に対して神戸の前線中央は1人で数的不利に。つまり神戸はCBにまでアプローチをかけるハイプレスを止めてきた。
神戸が行った守備はまず4-1-4-1でセットする。
そしてセレッソのCBにまでアプローチをかけることはほとんどなく、1トップの渡邉千真はセレッソのダブルボランチの間に立つ。そしてセレッソのCBがボランチにボールをつけると
そこに対してボールサイドのインサイドハーフがアプローチをかける。という形だった。
インサイドハーフがボランチに対するアプローチも、ボールを奪いに行くというよりも、フリーで前を向かせず制限をかけるというもの。セレッソのボランチに簡単に前を向かれてしまうと、前回対戦時同様にボランチ裏でボールを受けられる可能性も出てくる。
なので、4-1-4-1の布陣で、ボールを奪いに行くというよりも待ち構えて入ってきたボールに対してアプローチをかけるという形に変わっていた。

この形をとることで、試合序盤からセレッソがボールを持つ時間の方が長いという展開になったが、低いラインにもかかわらず前から追いかけるというどうやっても中盤にスペースができるしかない前回対戦時にみせた様なアンバランスさは解消され、神戸としては比較的安定した守備ができていたといえるだろう。
また課題の最終ラインの高さに関しても、神戸のインサイドハーフがセレッソのボランチにアプローチに行くことができているかどうかというはっきりとした判断基準があるので、前回よりも無駄に間延びしているような部分は少なかった。
そしてその分、セレッソがロングボールを蹴った場合でもポッカリ空けてしまうことも少なく、中盤のセンターに3人いることでセカンドボール争いでも、セレッソの方が優位ではあったものの前回対戦時の様に大きく後手を踏む場面は少なかった。
前半にチャンスを作ったセレッソの右サイド攻撃
ただ少し不安定だったのがサイドの守備で、福満が右よりのポジションを取ることが多かったので特に神戸の左サイドでは、水沼の中に入る動きに対して伊野波が引っ張られてしまい、サイドに開いた福満がフリーでボールを受けるという場面が序盤から何度も見られている。
今シーズンのセレッソはボールを持ったときにグループとして強みを発揮するところまでは至っていないのでここを上手く使う事はできなかったが、神戸の守備は最終ラインが動かされた時にだれがどこを埋めるかというところまではできていなかったようだ。

■リスクをかけない両者

神戸の攻撃
神戸はハイプレスを止め、待つ守備を選択したことで当然攻撃の形も変わる。最初の狙いは渡邉千真と走れる両サイドを使ってのカウンター。下がる分敵陣にはスペースができるのでそこを走れる選手で狙っていこうというものだろう。しかし中央ではヨニッチと木本の2人がいるのでなかなか両サイドの走力を活かす展開にセレッソは持ち込ませなかった。
次に狙うのは逆サイドのSBを上げてのサイドチェンジ。
セレッソは守備でボールサイドにスライドにするし、ボールを奪ったときに小川と小林の両サイドは最初に中央に向かって走る。その分、遅れて上がってくるSBはフリーになりやすいのでそこに対して対角の長いボールを蹴ってきた。
またこのロングボールからの展開で特徴的だったのは、縦に突破してクロスというよりも一旦マイナスに戻してそれをダイレクトで上げるという形を多用していたこと。
特に前半は右サイドから何度もこの形を使っていたので準備してきたものだろう。

神戸は前回対戦時も含めて、マイボールの時はもう少しボールを繋いでくる傾向があったのだが、この試合ではカウンターと対角へのロングボールという2つを中心にしてきたので、セレッソは高い位置からの守備でボールを奪う場面は少なく攻撃の形はクロスが中心。
後ろではボールを持てるものの中央は密集しているので、縦パスを入れてサイドに展開という形までは作れていないので決定機までは作れない。
神戸もカウンターやサイドチェンジという形は、そこまで持っていける場面自体もそれほど多くなく、ロングスローからスクランブルを作る方が可能性があるという展開だった。

前半終了時点のシュート数もセレッソが4本、神戸が3本とどちらも少ないことからもわかるように、どちらもいい形の攻撃ができていたわけではないが、ある種一発勝負のカップ戦らしい相手を消し合う、そして必要以上にリスクはかけないという前半だった。

■攻撃の回数がさらに少なくなる神戸

後半に入っても基本的にはまだ動きをつける必要は無いということで前半同様の展開が続く。
セレッソは前半の立ち上がりに見せていた右サイドの水沼と福満の関係を後半に入ると左サイドで見せるようになり、入れ替わるように中から外へと神戸の右SB高橋峻希の裏を狙う形を見せる。
ここはやはり少し神戸の守備は不安定なので、ほころびが出そうになる場面もあるのだが、そこをGKキム・スンギュがカバーしていた。
またセレッソが後半は左サイドからの展開を多くしたので、小川がかなり低い位置まで下がってくる場面も見られるようになっておりその分カウンターが前半以上に厳しくなっていたが、神戸にとっては無失点で試合を進めることの優先順位の方がずっと高いのでしょうがないというところなのだろう。ただ、その結果神戸は後半に全くシュートまで持ち込むことができなくなっており、神戸の後半最初のシュートは89分の藤田の左足ミドルだった。

あと、後半途中から神戸は中盤の3人が前半の高橋秀人がセンター、右に藤田、左に松下という並びから、後半途中に高橋秀人が右、中央に松下、左に藤田という形に変わっていた。
最初はセットプレーからのセレッソがカウンターを行った流れでポジションが入れ替わっただけかと思っていたがそのまま戻さずに続けていた。おそらく狙いとしては渡邉千真以外にロングボールのターゲットを作りたいというものがあったんだと思うが、それが最初に見れたのは82分だったのでもしかしたら偶然かもしれない。
77分〜
神戸は何とか中央に人数をかける形で守ることで試合の均衡は保たれていたものの、時間の経過と共に少しずつスペースは広がっていく。
そんな状況が見え始めた77分にセレッソが最初に動く。福満に代えて柿谷を投入。そのまま前線のポジションに入る。

■神戸の先制からセレッソの同点ゴール

しかしここからも中央に人数をかけて守る神戸に対してセレッソは攻めあぐねる時間が続く。
87分〜
87分、神戸は小林に代えて大森を投入。あくまで全体のバランスは変えない。
ただ、この前後からセレッソは小川に抜け出されかける場面があったり、キム・ジンヒョンにミスがあったりとミスが出て自らバランスを崩す場面があった。
その結果先程にも書いた神戸にとって後半初めてのシュート、89分に藤田が左足でミドルシュートを放つ場面を作る。
ただ、藤田のシュートに繋がった展開は秋山と丸橋の2人が治療のためピッチの外に出ている中でのロングスローからというアンラッキーな状況だった。

するとその直後の90分、ここでは高橋秀人ではなく松下が前線に出ていた中だったが左サイドから大森が入れたクロスがヨニッチを越えてそのままゴールイン。
90分に神戸が先制する。神戸はここまでチャンスらしいチャンスはほとんど無く、後半に至ってはこれをシュートとカウントしたとしても2本目となるシュートだったが、前半から我慢して我慢した中で生まれた得点。
セレッソにすると、少し優勢になっていた中で柿谷を投入して、延長になったとしてもこのままでもまだ優位のまま試合を進める事ができるのに、自らが少しバタついてしまってのもったいない失点だった。

神戸は先制したことで田中英雄を準備。アディショナルタイムの4分を逃げ切ろうという判断だろう。
しかし試合再開のキックオフと同時にセレッソは木本も前線に上げ、ソウザから山村めがけてロングボールを入れる。山村が渡部博文に競り勝ち背後に流れたボールに対してキム・スンギュが何とか足でクリアを試みるも、そのこぼれ球を水沼がボレーで押し込みゴール。
試合再開からのファーストプレーで同点に追いつく。
神戸として悔やまれるのはキックオフから一気に前線に駆け上がるセレッソの選手に合わせて全選手が下がってしまい、ソウザに対して全く誰もアプローチに行けなかったことだろう。
なのでソウザは山村を始めとする多くの選手がペナルティーエリアまで行くのを待って余裕を持ってロングボールを蹴る事ができた。
ただそれを決めてしまう水沼はさすがというしかない。

そしてこのまま90分が終了。89分までは動きの少ない試合だったが最後一気に動いて延長に突入する。

■試合をきめた延長戦

延長にはいると流石にオープンな展開になっていく。ただ、そんな中でもやはりセレッソの方が敵陣にボールを運ぶ回数が多かった。
そんな中96分に秋山が少し無理をしたことでファールを受けFKを獲得する。
このFKから丸橋が蹴ったボールはニアで松下が跳ね返すが、そのこぼれ球を木本と高橋が競り合う中で藤田が手でボールをコントロールしたことでセレッソがPKを獲得する。
藤田のハンドリングはメインスタンドから見てもわかるぐらいあきらかだった。主審のホイッスルが少し遅れたのは藤田の手の位置が主審からはブラインドになっていたからかもしれない。

この柿谷が蹴ったPKを一旦はキム・スンギュがセーブするもそのこぼれ球を自らが頭で押し込みゴール。98分にセレッソが逆転ゴールを決める。
PKを蹴った本人というのは、蹴った瞬間に入るかどうか、キーパーがセーブするかどうかはほぼわかる。なのでいち早く反応することができたのだろう。
100分〜
このゴールによるゲーム再開のタイミングからセレッソは山村を最終ラインに下げる5バックに変更。山村によるとPKの判定が出たタイミングで尹晶煥監督から決まれば最終ラインに入る指示があったそうだ。
なので、このゴールによるゲーム再開のタイミングで神戸はロングボールを入れてきたが、その時には既に山村は最終ラインにいた。
そして次のプレーが切れたタイミングの100分に神戸は小川と松下に代えてハーフナー・マイクと大槻を投入。渡邉千真が右SHにはる4-4-2に変更する。
ただ、この5バックになった当初、水沼が前線の枚数を尹晶煥監督に確認しており2トップと言っていたので清武と柿谷が前線に残る5-3-2になったのだが、もしかするとソウザは把握できていなかったのかもしれない。中盤の左にあたるソウザがあまり左サイドにスライドしないので丸橋が飛び出していかないといけない場面があったり、清武が遅れて戻る場面もいくつか見られた。
その結果が左サイドを大森が抜けて折り返し、ファーサイドで伊野波が合わせるという102分の場面に繋がったが、これは伊野波がオフサイドポジション。神戸は同点ゴールを逃す。
そしてこのタイミングで水沼が全員と会話をした結果、その後は清武が左サイドに入る5-4-1になった。
105+2分〜
そして延長前半アディショナルタイムの105+2分。セレッソは木本に代えて山下を投入。
神戸はもうロングボール狙いになっており、ハーフナー・マイクはこの3バックで一番高さの無い木本のところにポジションを取ることが多かったため、そこを山下で跳ね返そうということだろう。

延長後半の神戸はハーフナー・マイクめがけてロングボールを入れ、そのセカンドボールに人数をかけようという狙いをはっきりとさせてきた。
それに対して山下、ヨニッチ、山村で跳ね返し、柿谷、水沼、清武とソウザでカウンターを狙うセレッソ。
準備できていて機能していたのはセレッソだった。キム・スンギュのスーパーセーブがなければもっと早くに3点目が決まっていただろう。
111分〜
111分にセレッソは2分ほど前から足をつらせていた清武に代えて田中裕介を投入。丸橋を2列目の左サイドに出し、田中は最終ラインの左に入れる。

神戸はこのパワープレーで高橋秀人、大槻と2本のシュートを放ったが、大槻のシュート直後の114分。セレッソは水沼が渡部博文との競り合いでこぼれたボールを柿谷が拾い、中央に上がってきたソウザにパスを出すと、ソウザがキム・スンギュの股を抜くシュートを決めてゴール。
ルヴァンカップ決勝と同じく、試合を決める2点差となる追加点をソウザが奪った。

その後も神戸はパワープレーを続けるものの、シュートまで持っていくことなくそのまま試合終了。セレッソ大阪が1-3で勝利、2018年1月1日の決勝進出を決めた。

■その他

リーグ戦に比べディフェンシブに戦うことで活路を見出そうとした神戸は、試合を動かさずに0-0のまま時間を進めるというのはゲームプラン通りだっただろうし、90分にゴールを奪うというのはゲームプラン以上の展開だっただろう。
ただその分、直後にセレッソが追いついてからは、出来ることはあまり無かったんじゃないかと思う。
神戸がこの試合でとった戦い方は、リーグ戦でも同じように戦っても結果が出るかどうかはわからないが、カップ戦のトーナメントとしては有効だった。

試合の勝敗を分けたのはちょっとしたディテールの差だったが、この差はリーグの第24節で鹿島に見せつけられた差に近いものじゃないかと感じた。
そのときにも書いたが「状況を整理して可能性を掴む為に時間を含めてどういう戦略を取るかという力」が神戸よりも上回ってたんじゃないかと思う。

そして決勝の相手は横浜F・マリノスに決まった。
この決勝に勝てばAFCチャンピオンズリーグがストレートインになるので日程的にもかなり楽になることももちろんあるが、それ以上に天皇杯のタイトルが欲しい。




2 件のコメント :

  1. Akiさま 
     昨年このブログを見つけて読み始めました。
     初心者の私には戦術やフォーメーションの
     違いなどわからないことだらけだったの
     ですが、
     このブログのおかげでサッカーの基本的な
     ことがいろいろ判りサッカー観戦が楽しく
     なって毎週見るようになりました。
     今年はセレッソの監督・選手が一丸となって
     見ている方も随分勇気をもらった気がします。
      ※終了間際のゴールやドラマチックな試合も
        多かったですし。
     初めてのタイトルも獲得して本当に良い一年でした。
     来年初日の天皇杯のタイトルも獲得してサポーターも
     喜びを分かち合いたいですね。
     来年度もAkiさんの分析を楽しみにしています。
     良い年をお迎えください。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      天皇杯も是非優勝したいですね!

      削除

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