2016年7月6日水曜日

扇原貴宏選手 名古屋グランパスへの完全移籍について

セレッソU−18出身で日本代表経験もある扇原貴宏選手の名古屋グランパスへの完全移籍が発表されました。






扇原選手は2010年にセレッソ大阪U-18からトップチームに昇格。1年目は右腓骨病的骨折が見つかり手術・リハビリとシーズンの殆どを棒に振ってしまう事になりましたが、2シーズン目の2011年から出場機会を増やし始め2012年にはポジションを確保。ロンドンオリンピックにも出場します。
ロンドンオリンピックでもボールロストから失点してしまいましたが、不安定なプレーを見せる事もあり、またカードの多い選手でもあるので出場停止になる事もあって、シーズン中のどこかでベンチに回される事もありましたが、ハッキリとした大きな魅力をもつ選手でもあったので、まだ24歳という年齢ながら2012年以降は常にチームの中心選手としてプレーしてきました。

そんな扇原にとって転機になったのは大熊清氏が強化部長だけでなくトップチームの監督に就任した事。
大熊清氏が監督に就任すると2015年のリーグ最終戦、プレーオフと橋本に先発の座を譲ることに。最終戦は累積警告あけだったので一時的なものかと思われましたが、シーズンオフには山口蛍が抜けたものの山村とソウザを獲得。大熊氏特有の使う使わないにかかわらず大量の選手を手元に抱えたがる強化方針もありますが、大熊氏からの評価は低い事がうかがえます。そして実際にシーズンが開幕すると序列的にもソウザ・山村と橋本に次ぐボランチの4番手である事がハッキリしたので移籍の道を選んだのでしょう。24歳の選手が半年間ほぼプレー出来ていない事は重大な問題ですから、出場機会を求めるのは当然のことです。

これまでもシーズン中に移籍をする選手は数多くいましたが、その中では今回のケースは安藤が松本山雅に移籍した時の形に近いケースでしょうか。移籍に関する条件は伝わってきていないので詳細はわかりませんが、売ったというよりも、出場機会が少ない選手を引っ張っていったという形にだと思われます。
移籍が発表される前後から出すならレンタルでという声が大きかったと思いますが、完全移籍となったのは、改めて振り返ると今シーズンの扇原の立ち位置は調子を落としている選手というわけではなく、先ほども書いたようにスタートから一貫してボランチの4番手の選手という立場。下部組織出身なのでおそらくレンタルの提案はあったでしょうが、チーム編成としては優先順位が下がっている選手だったので完全移籍という形に落ち着いたのでしょう。

これまで毎シーズン30試合以上出場してきた選手だけにこういった形でチームを去る事になる事は残念ですし、それなら開幕時点でレンタルに出すといった方法を取れなかったのかという不満はありますが、名古屋で素晴らしいプレーに期待したいところです。

■扇原貴宏のプレー

扇原貴宏は左利きのボランチ。トップチームにデビューした2011年5月のACLアレマ・インドネシア戦。この時は茂庭との交代でCBに入っています。Jリーグデビューは同じ2011年8月のアウェイ鹿島アントラーズ戦。この時はマルチネスの代わりに左ボランチでした。そしてその翌節、アウェイでの清水エスパルス戦にも先発出場。この試合ではCBで先発しますが後半開始からボランチに。これ以降は、スクランブル的に左SBだったり、アウトゥオリの4-3-3では左のインサイドハーフで起用されていましたが、基本的にはボランチとなっています。

彼の一番の魅力はなんといってもその左足。左足から繰り出される長いボールの精度はかなり高く、扇原にしか出せないパスというものがある選手。
この左足のロングキックは守備戦術の発達により攻撃の基点がどんどん後ろに下がってきている現代サッカーではかなり大きな武器となり得るものです。
ボールの質もバックスピンをかけたものから、ストレート系、カーブ系、地をはうようなボール、浮き球とバリエーションが豊富。またさらに同じフォームから通常のキック以外にあえて引っ掛け気味にしたりと2つの軌道のキックを使い分ける事ができます。
これだけのキックを持っており、また本人もそのキックに自信を持っているので、縦パスの意識もかなり高い。日本人選手の中でこれだけチャレンジの縦パスを出せる選手はそう多くありません。

ただ、その意識の高さ故に早くパスを入れたいがあまり、ボールをしっかりと止め切る前にあわてて顔を上げてしまう事も多い。決して足下の技術に不安がある選手ではありませんが、特にプレッシャーを受けるとボールを動かさないといけないと気持ちで焦るのか、キチッとボールを止める前に顔を上げてしまい、ボールコントロールのミスからボールを奪われる事もあります。
しかしその左足はやはり魅力なのでチームとして扇原を自由にする仕組みを作ることができれば、多くのチャンスを作る事は間違いありません。

ただ守備に関しては課題も多い。基本的に足が遅いのでスピードで振り切られないようにスグに相手に手をかけてしまうことも多く、イエローカードが多い理由の1つはこれ。もう1つは喰いつく守備から止まりきれずに遅れて引っ掛けるパターン。セレッソの中盤の選手で多いパターンです。
とはいえ、守備意識が低いわけではありませんので、しっかりと出来ることをやるという環境を与えることができればそれほど大きな問題にはならないでしょう。

大熊清氏の前は、ポポヴィッチが扇原の良さを出しにくい戦い方をしようとする為に苦労するようになり、アウトゥオリが最初に使った左のインサイドハーフは新たな可能性を感じさせるものでしたが別の問題で頓挫という流れ。なのでここ数年は彼にとって厳しい状況が続いていましたが、さすがにボランチの4番手で試合に出さずに置いておくには勿体無い選手。
チームを去ってしまうのは残念ですが、この移籍を機に素晴らしいプレーを見せてくれる事に期待したいです。

7 件のコメント :

  1. 自前で育てた優秀な選手(もちろん欠点もありますがw)を生かし切れない「育成型クラブ」とはなんなんでしょうね…。
    やっぱり残念で申し訳ない気持ちが強く残りますね。
    名古屋を残留させてw、大きくなって戻ってきて欲しいです。

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    1. コメントありがとうございます。
      移籍するのは仕方ないにせよ、こういう形は残念ですね。

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  2. 育成出身であることが、契約継続の保証にはならないと思いますので、現状ではやむを得ないというか、J1名古屋への移籍なんて幸運なチャンスではないでしょうか。走力、アジリティ、当たりの強さなどフィジカル面を重視する大熊監督の信頼を得ることは、まず難しいですから。とはいえ、監督の好みとして済ませないレベルのように思うので、移籍を機に鍛え直さないとね。頑張ってほしいです。

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    1. コメントありがとうございます。
      育成出身であることは契約継続の保証には当然なりえませんが、クオリティを持つ選手を放出するのは残念です。長所も短所もハッキリした選手だけに、やりようはあったのに・・・
      もちろん彼にとってはチャンスなので活かして欲しいですね。

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  3. 2013シーズン開幕の新潟戦での曜一郎へのアシストはよく覚えています。
    ゴール裏でみてて、健勇に早く放りこめっどこ蹴ってんねんと思ったら曜一郎にぴたり!
    見返したらちゃんと動きだしも確認して出してるし!このシーズンは良いパス多かったですね。
    ほんとこれからの成長に期待して応援します!またどこかでタカから曜一郎への裏抜け一発みたいです!

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    1. コメントありがとうございます。
      けどあの2013年にリーグ戦で出場した試合のうち唯一スタメンじゃなかったのはあの開幕戦なんですよね(笑)。

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  4. 記事を読んで、どうして最近チーム内で浮いていたのか良く分かりました。
    このままセレッソに残って不完全燃焼な状態でいるより、違う場所で新たな経験・知識を得る方が本人にとっても良いと思います。

    話は変わりますが、玉田・田代・橋本らのベテランを上手く使うことは出来ないのですかね…
    途中中交代で出てきても、ゲームの中で全く生かされていないように感じます。彼らベテランの考え方や試合勘は、現在の混乱してるチームの中で非常に貴重なように思うのですが…

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